「美肌菌」という言葉をご存知でしょうか。
私たちの肌には普段から何種類もの常在菌が棲んでいます。それらの菌の中には、肌を守り美しさを保つ働きのある「美肌菌」というものが存在するのです。
しかし、我々の何気ない生活習慣が大切な美肌菌を減少させてしまうことも。美肌を目指すなら、この美肌菌の力を活かし育ててやることが大切です。
この記事では「美肌菌」を育てながらのスキンケア方法をについて皮膚科医がご紹介します。
美肌菌を育てると得られる効果
美肌菌は肌を保護し、角質内の水分量をアップさせることができます。
美肌菌を育てることで得られる具体的な効果は以下のとおりです。
- キメが整う
- 敏感肌などの肌トラブルの減少
- 潤いがアップする
- 透明感アップ
- シミやシワが少ない肌になる
美肌菌を増やすことは、肌悩みを解消するだけでなく美しさや肌老化の予防にもつながるため、肌質を問わず非常に有益なことと言えるでしょう。
美肌菌を増やす正しいスキンケア方法
肌の美しさには欠かせない美肌菌ですが、増やすためにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
ここでは、美肌菌のための正しいスキンケア方法を解説します。
洗顔のポイント
美肌菌はあくまでも菌です。そのため、洗いすぎると皮膚表面に生息している菌が減少してしまいます。
美肌菌を増やすには、洗いすぎず優しい洗顔を心掛けることが大切です。
- 何度も洗顔しない。洗顔料をつかうのは1日1回にとどめる
- 洗顔にはシンプルな固形石鹸がおすすめ
- 35度程度のぬるま湯で優しく洗う
- 洗浄力の強いメイク落としは使わない
肌に余計な刺激を与えず、とにかく優しく洗うことで美肌菌の減少を防ぐことができます。
使用する洗顔料やクレンジング剤も、なるべくシンプルな処方のものを選ぶことをおすすめします。
特に肌の乾燥に悩んでいる方は洗いすぎには注意しましょう。
お手入れのポイント
基礎化粧品でのお手入れでは、以下のポイントを押さえましょう。
シンプルなアイテムを使う。乳液・クリームはどちらか一方で十分
高機能美容液などの過剰なケアは使わない
化粧水・乳液・美容液にパックなど、ついつい増えてしまいがちな美容アイテムですが、美肌菌のためにはシンプルが一番です。過剰に美容成分をつけすぎてしまうと、角質層のバリアを破壊してしまう可能性があります。
角質層が傷ついてしまうのは、美肌菌の生育環境にも良くありません。肌の状態を良好に保つには、手入れしすぎないことも大切なのです。
美肌菌を増やす食事術
美肌菌を増やすためには、食事面からのアプローチも大切です。
食事は肌状態と密接に関係しています。美肌菌を増やすためには、体の内と外、両面からケアすることが大切。健全な食生活を送ることで、より美しい肌を目指すことが可能となるのです。
ここでは、体内から美肌菌を増やすための食事法についてご紹介します。
糖化を防ぐ食事をする
老化を進める原因のひとつとして「糖化」があります。糖化は、体内の糖質がタンパク質と結合し「AGEs(最終糖化産物)」が産生されることです。
この「AGEs」は老化の原因物質であり、肌のシミやシワ、弾力低下などの肌老化を引き起こします。そのため「糖化」をなるべく予防することが大切です。
糖化を招くのは「血糖値の急上昇」と「糖質の摂り過ぎ」です。これらを予防するためには以下のことに注意しましょう。
- 朝食は抜かない
- 最初に野菜を食べる
- 糖質の多い食事は、食物繊維の多い食材と一緒に食べる
- 抗糖化作用のあるレモン汁・お酢・オリーブオイルを積極的に取り入れる
- 揚げ物や甘いものは控える
- 甘いものの間食を続けない
- 食後には軽い運動がおすすめ
酸化を防ぐ食事をする
「糖化」とともに予防したいのが「酸化」です。体内の酸化が進むとシミやシワを増やしてしまう危険性があります。
酸化を招くのは紫外線やストレス、過度な運動などさまざまですが、以下のような食生活の工夫で酸化の原因となる「活性酸素」を減らすことができます。
- 食物繊維や発酵食品を積極的に取り入れ、腸内環境を整える
- 抗酸化作用のあるビタミンA・C・Eやポリフェノールの含まれた食材を食べる
- 体を動かす前後には抗酸化食品(野菜やビタミン豊富なもの)をたくさん摂る
嘘が広がっている間違ったスキンケアとは
美肌をめぐってはさまざまな説や方法が流布しています。
しかし、その中には間違ったスキンケア法も。美肌菌を活かすためには、そうしたNGスキンケアに惑わされないようにしましょう。
「温泉は美肌菌を増やす」はNG
温泉にはさまざまな泉質のものがありますが、いわゆる美肌の湯と言われているものは「弱アルカリ性」のものが多いです。湯上り後に肌がすべすべした感じがするのは、アルカリ性の湯にピーリング効果や保湿効果があるためです。
しかし、美肌菌が温泉によって「増える」ことはありません。
美肌菌は弱酸性の環境で生息しているため、長時間、あるいは複数回温泉に入りすぎてしまうと、減少してしまいます。
美肌菌を増やすことが目的なら、温泉に頼るのは間違った美容法と言えるでしょう。
「半身浴は美肌に効果的」はNG
汗をたっぷりかくため、肌に良いイメージがある半身浴ですが、美肌作りのためにはあまりおすすめできません。
美肌菌である「表皮ブドウ球菌」が棲んでいるのは肌表面に近い角質部分です。そのため、長風呂(30分以上)によって肌がふやけると垢といっしょに菌が流されてしまいます。
しっかりお風呂に入っているのに肌トラブルが治らないという人は、半身浴や長風呂のせいで美肌菌が減少しているのかもしれません。
それでも半身浴をしたいという場合は、10分~15分までを目安にしましょう。
「アクネ菌を除菌するとニキビが抑制される」はNG
ニキビ肌を治すにはとにかくアクネ菌を退治すればいい、と思っている方も多いと思います。
しかし、アクネ菌は一概に悪い菌というわけではありません。
アクネ菌は美肌菌同様、肌の常在菌の一種です。アクネ菌は過剰に増えるとニキビの原因になりますが、通常は皮脂を分解(または代謝)して、肌を弱酸性に保つ作用があります。
したがってニキビ菌を減らしすぎるのではなく、上手くバランスすることが大切です。
「美肌のために頻繁に洗顔を行う」はNG
美肌のためにと、1日に何度も洗顔していませんか?半身浴同様、顔の洗いすぎは肌フローラだけでなく美肌菌を減少させる行為です。
また、スクラブ洗顔やピーリングのし過ぎなど過剰な洗顔法も、肌の角質層を傷つけ角質に存在する美肌菌を追い出すことになってしまいます。
美肌菌は洗顔後8時間から10時間かけて再増殖し、肌を守っています。
そのため、1日に何度も顔を洗ってしまうと、その再増殖の機会を奪うことになってしまうのです。
美肌菌のためには、化粧落としの後だけに留めるなど、洗顔の回数は必要最低限にすることをおすすめします。
また、水洗顔が効果的という口コミも頻繁に見かけますが、お湯の温度が冷たすぎるとお肌には刺激が強い場合があります。
触った時に少しぬるいかな?と感じる程度の水温で洗顔することがおすすめです。
「アトピーを治すには体質改善が必要」はNG
アトピーを治すには生活面からの体質改善が必要、と思っている人は多いです。
しかし、アトピー性皮膚炎の症状に関係しているのは「黄色ブドウ球菌」と「コリネバクテリウム」という2つの菌であり、これらの増殖を抑えることが症状の改善につながるという研究結果も報告されています。
アレルギー体質が全くの無関係、というわけではありませんが、体質改善が即アトピー性皮膚炎そのものの治療につながるわけではないのです。
アトピーの症状を治療するためには、肌自体の菌のバランスを改善することが必要です。そのためには「美肌菌」を増やすことが役立ちます。
美肌菌にはアトピー症状の原因である「黄色ブドウ球菌」を減少させ、肌のバリア機能を高める働きがあります。
美肌菌は美しい肌へと導くだけでなく、肌本来の機能の回復のためにもかかせないものと言えるでしょう。
まとめ
アンチエイジングや美白など、肌ケアを謳ったスキンケア商品はさまざま存在します。
しかし美肌を目指すなら、まずは自身の「美肌菌」に着目してみてはいかがでしょうか。
美肌菌は本来、肌に備わった天然のスキンケア成分です。しっかり活かしてやれば、乾燥肌や年齢肌などの肌トラブル改善を期待することができます。
さらに今の自分のスキンケアや生活習慣が、美肌菌を阻害していないかを見直してみることも大切です。
美肌菌を活かすようなスキンケアを目指すことが、未来の美しい肌作りにつながるでしょう。