近年、「ラメラ構造」や「リポソーム化」した化粧品が注目されています。
どちらも肌なじみや浸透が良いと評判ですが、具体的な効果や成分はどのようなものでしょうか。
この記事では、「ラメラ構造化粧品」と「リポソーム化粧品」それぞれの成分や特徴、働きなどを詳しく説明していきます。
ラメラ構造について
ラメラ構造とは、肌の角質層の中にある保湿物質「細胞間脂質」と「水」がミルフィーユのように何層にも重なり合っている状態のことを指します。
角質層には角質細胞が並んでいるのですが、この細胞同士の隙間を埋めるようにして細胞間脂質は存在します。さらに、細胞間脂質もまた「油分」と「水分」が重なり合う「ラメラ構造」をしています。
角質層は0.02㎜と非常に薄い層ながらも、このように何層にも重なった油分と水分で、肌の健康を保っているのです。
では、ラメラ構造についてさらに詳しくみていきましょう。
ラメラ構造の主成分
前述したように、ラメラ構造を保つ細胞間脂質の主成分は油分と水分です。
油分には「セラミド」、水分には「NMF(天然保湿因子)」という成分が中心となって構成されています。
【セラミド】
油性の保湿物質で、細胞間脂質の50%を占めています。
水分を挟み込んで離さない性質を持ち、角質層の水分量を維持するために欠かせない物質です。セラミドは肌のターンオーバーと共に新しく作られますが、老化で代謝が悪くなると生産量が減少します。
【NMF(天然保湿因子)】
水溶性の物質で、肌本来の保湿成分です。細胞間脂質だけでなく角質層自体にも存在しています。
スポンジのように水分を吸収する性質を持ち、角質層にある水分量の約16~17%を守っています。アミノ酸をはじめとし、乳酸や尿素など約20種類の成分で構成されています。
ラメラ構造の働き
ラメラ構造の働きは「バリア機能」として肌の内側を守ることです。
油分と水分が隙間なく重なり合って、肌の中と外を隔てるシャッターのような役割をします。
主な働きは以下の通りです。
- 肌の水分をキープする
- 肌に異物を侵入させない
- 紫外線や乾燥などの外的刺激を抑える
つまり、健康な肌を保つためにはラメラ構造を整えることが大切なのです。
ラメラ構造が乱れてしまうと?
ラメラ構造が乱れると、肌のバリア機能の低下につながります。
本来であれば「油分」と「水分」が隙間なく重なっているラメラ構造ですが、乱れると角質層に隙間ができてしまいます。
この隙間から水分が蒸発したり、外部刺激を受けたりするため、肌トラブルが起きやすくなるのです。
【ラメラ構造の乱れによる肌トラブル】
肌のバリア機能が低下しているとき、肌は乾燥や刺激に弱くなっています。
とくに、乾燥はさまざまな肌トラブルの原因にもなるので注意してください。
<乾燥による肌トラブルの例>
- 皮脂の分泌量が増えニキビができやすくなる
- 肌のターンオーバーが乱れ古い角質が溜まりやすくなる
- シワやシミができやすくなる
【ラメラ構造が崩れる3つの原因】
では、なぜラメラ構造は乱れるのでしょうか?
ほとんどの原因は間違ったスキンケア法にあります。
①洗顔のしすぎ
一日に何度も洗顔したり、洗浄力の強い洗顔料を使い続けたりすると、肌に必要な皮脂や水分まで落とし過ぎてしまうためラメラ構造が隙間だらけになります。
また、お湯の温度も重要です。
42度以上の高温のお湯は、皮脂だけでなくラメラ構造である細胞間脂質まで奪ってしまうので注意してください。
なお、ラメラ構造を守る一般的な適正温度は30~36度といわれています。
さらに、洗顔後や入浴後は肌の水分量が減少するのですぐに保湿ケアをしましょう。
②摩擦による刺激
タオルで顔を拭く時や、コットンで化粧水をつける時、強くこすると摩擦によって肌のバリア機能が崩れます。
また、フェイスマッサージも摩擦の原因になるので、マッサージを行う場合はすべりの良いクリームなどを使用しましょう。
肌の表面に存在するラメラ構造は、スキンケアの影響を受けやすいため、なるべく肌に負担をかけないことが大切です。
③紫外線対策
紫外線は日焼けやシミの原因となるだけでなく、肌のバリア機能にも影響を及ぼします。
ラメラ構造がある角質層は、皮膚の一番外側にあるので、紫外線によるダメージを受けやすいといえます。
また、紫外線は一年中降り注ぐので、季節や天気に関係なく紫外線対策は常に行うべきです。
ラメラ構造化粧品の特徴
ラメラ構造は肌のバリア機能を担う大切な存在です。
そんな「ラメラ構造」を再現した化粧品を、「ラメラ構造化粧品」と呼びます。
では、具体的な特徴を見ていきましょう。
バリア機能の向上
ラメラ構造化粧品は、すでに水分と油分がミルフィーユ状に重なり合った状態なので効率よく肌のバリア機能を高めることが期待できます。
肌のバリア機能が高まることで、乾燥や外部刺激に強くなり、ターンオーバーも正常に行われます。
とくに敏感肌の方はバリア機能が弱まっている場合が多いため、ラメラ構造を整える化粧品を使うことが健康な肌への近道といえます。
高い保湿効果
ラメラ構造化粧品には、肌本来の保湿物質である「セラミド」と「NMF」を含みます。
つまり、根本的な保湿ケアができるため高い保湿効果が期待できます。
乳液やクリームなどで保湿をしても肌に乾きを感じる場合は、ラメラ構造が隙間だらけになっている可能性があります。
そのような場合こそ、根本的に保湿ケアをすることが大切です。
馴染みやすく高浸透
ラメラ化粧品は、肌と同じ構造なので肌なじみが良く高い浸透効果が期待できます。
どれだけ素晴らしい成分であっても角質層にしっかり浸透しなければ、根本的な肌の改善には繋がらないといえます。
リポソームについて
リポソームとは、「肌の細胞膜を再現したカプセル」を使った浸透技術のことです。
もともとは薬物を体内に素早く届けるために医療分野で使われていましたが、有効性の高さから、最近では美容の分野でも使われています。
カプセルのサイズは0.1~0.2㎛(マイクロメートル)と非常に小さく、細胞の大きさとほとんど変わりません。成分も人の細胞と同じ分子のものを使っているため、美容成分が肌になじみやすいのが特徴です。
では、具体的にリポソームについてみていきましょう。
リポソームの主成分
リポソームは、人の細胞膜と同じ分子の「リン脂質」を使って作られています。
リン脂質は「水にも油にもなじみやすい」という特殊な性質を持つ分子です。ひとつの分子の中に「親水基」と「親油基」をあわせもつ両親媒性分子で、この2つが向かい合って、さらに何層にも重なり合って構成されています。
このような形から、リン脂質は「玉ねぎの切断面」に例えられます。
一般的なナノカプセルとどう違うの?
リポソームとナノカプセルの違いは、さまざまな臨床試験をクリアできたかどうかです。メーカーによってカプセルに使う成分が違うこともありますが、技術そのものに違いはほとんどありません。
リポソーム化粧品であることを証明するためは、厚生省の一定の基準をクリアする必要があります。肌への安全性や、成分自体の安定性などいくつもの試験方法を行い、厚生省に証明しなければいけません。
つまり、一般的なナノカプセルを使った化粧品よりも基準が厳しいため、安心して使えるということです。
リポソーム化粧品の特徴
リポソームは人の細胞膜と同じ分子膜なので肌なじみの良さが特徴です。
この技術を使った化粧品には、他にどのような特性があるのか見ていきましょう。
有効成分をお肌の奥までゆっくりと浸透させる
肌になじみやすいので、さまざまな有効成分をカプセルの中に閉じ込め、角質層深くに届けることができます。
浸透する過程で、何層にも重なったリン脂質がまるで玉ねぎが一枚ずつめくれるように少しずつ崩壊していき、包んでいた美容成分を徐々に肌へと解放していきます。つまり、美容成分が時間をかけて肌に浸透することで、長時間うるおいがキープされることが期待できます。
ただし、化粧品は肌の弾力やハリを保つ真皮までには到達しません。
コラーゲンやビタミンCのようなシワやたるみに効果的といわれている美容成分も、角質層までしか届かないということは理解して使用しましょう。
劣化しやすい成分を新鮮な状態で保ってくれる
美容成分の中には劣化しやすいものもあります。
不安定な成分をリポソームというカプセルの中に入れることで、いつでも新鮮な状態で保つことが可能とされています。
まとめ
「ラメラ構造化粧品」も「リポソーム化粧品」も、共通点は「肌と同じ構造を再現した化粧品」であるということです。
以下にそれぞれの特徴をまとめました。
【ラメラ構造化粧品】
肌のバリア機能である「ラメラ構造」を再現した成分を補う化粧品です。
- 肌の水分の蒸発を防ぐ
- 紫外線や乾燥などの刺激から肌を守る
- 肌荒れを起こしづらくなる
【リポソーム化粧品】
肌の細胞膜と同じ分子のカプセルを使った化粧品です。
- さまざまな美容成分を閉じ込められる
- 壊れやすい成分も安定化できる
どちらも肌への浸透性・安全性が高いといえるので、スキンケアの目的によって選んでみてください。
本質的なスキンケアをするなら「ラメラ化粧品」を、美容成分の浸透を高めたいのであれば「リポソーム化粧品」がおすすめです。
肌なじみの良い化粧品を使用して、うるおいに満ちた肌を手に入れましょう。